擬態うつ病について

「私は絶対うつ病」!うつを装う心のゆがみ「擬態うつ病」って?

近年、テレビや雑誌などでもうつ病が取り上げられ、またインターネットの普及などによりうつ病に対する知識は広まりつつあると言えます。しかしその知識を聞きかじりし、医師の診断を仰がずに「私はうつ病である」と主張する人たちも増えています。そのような人に遭遇したこと、あなたはありませんか?

うつ病になりたがる擬態うつ

インターネットや雑誌などのうつ病診断を見て「私はうつ病に違いない」と思い込む人がいます。そのような人たちは通院はしようとせず、自己診断の「うつ病」を掲げて病気であることを主張し、まるでうつ病になりたがっているかのようです。そんな人たちのうつ病を「擬態うつ病」と呼びます。

擬態うつ病はあるドクターが提唱した造語ですが、「病気だから優しくして欲しい」「私はうつ病なのだからかわいそうだ」などと言った甘えや思い込みが強いことが多く、抗うつ剤を飲んでも効果はありません。しかしながら、病気を盾に取り愛情や保護されることを求める裏側には、心の奥の深い歪みがあり、何らかの心のケアが必要な状態だと言えるでしょう。ただし彼らの主張するうつ病はうつ病ではありません。そこははっきりとした区別が必要です。

擬態うつの人が抱える心のゆがみ

擬態うつ病の人は、何故病気を主張するのでしょう。それは主張の裏側にある彼らの叫びに見て取ることができます。うつ病の人への接し方として、近年世に知られるようになってきた「がんばれは禁句」「十分な休養を」といったものは、健康な人からすると一見「優しく甘やかしている」ように感じられる部分もあります。そもそも、体にしろ心にしろ、病気を抱える人に初めから辛辣に接する人はあまりいないでしょう。擬態うつ病の人は、自分たちはうつ病であると主張しながら、「だから優しく愛情もって接して欲しい」と叫んでいるようにも見えます。

飼い犬が仮病を起こすことがあります。これは、病気の時に飼い主に優しくしてもらったことを覚えているから。動物にもこのようなことが起こるのですから、人にも似たようなことが起きても不思議ではありませんよね。

しかし擬態うつ病の人が仮病かと言われれば、そこは難しいところです。確かにうつ病ではないのでしょうが、彼らの心には深い闇が潜んでいるとも言えるからです。病気を掲げてまで誰かの優しさや愛を欲するその心には、それらへの渇望が感じられます。擬態うつ病の人は、人格を形成している心のパーツが歪んだ状態、いわゆるパーソナリティ障害である可能性が否定できません。その場合、うつ病とは別の切り口から心の歪みを治していく必要があります。本人が医師の判断なしにうつ病だと主張する時、その方法があまりにも病的だったり執拗だったりするケースでは、一度専門家のもとを訪れたほうが良いでしょう。

うつの自己診断はせず、専門医のもとへ

近年、雑誌やインターネットなどで手軽にうつ病チェックができるようになりました。ですがそこでチェックをし、たとえ「あなたはうつ病の可能性があります」と結果が出ても、「私はうつ病なんだ……」と思い込むのは早いです。心の病気は似たような症状が重なることが多々あり、診断するには専門の知識と経験が不可欠です。素人が「私はうつ病」などと安易に判断できるようなものではないのです。

うつ病と一口に言っても、ストレスからくるもの、体の病気からくるものなど、原因も様々です。正しく治療をするためには、必ず専門家の判断を仰ぐようにしましょう。

擬態うつ病が生み出す偏見の闇

ところでこの擬態うつ病、増えるにしたがってとても困った状態を生み出しているとも言えます。それは、うつ病についてよく知らない人たちに、うつ病に対する偏見を植え付けてしまうこと。従来のうつ病では自責の念が非常に強いのですが、擬態うつ病の人は他罰的になりやすい面があります。また、病気なんだから優しくして欲しいなどという主張は、健康な人の目からみれば甘えに映ります。

いまだ根強くある「うつは甘え」の考え方を助長させているとも言え、従来型のうつ病で苦しむ人にとっては困ったことです。従来のうつ病に対する知識が正しく広がり、擬態うつ病の人を「うつ病でなく、他の病気では」と判断できる目が培われることが、大きな課題と言えるでしょう。