見返り

ほんの少しの頑張りでも、きっと見返りはあります

その人はDさんという女性の方なのですが、中学校の頃から「パニック障害」という精神病をわずらってしまい、
周りにいる人がみんな敵のように思い、少しでも嫌なことがあると、「なんで、自分が嫌な思いをしなければならないのか」と怒っていました。
そして、特別学級にいることに不満を持ち、少しでも悪いことをして目立ちたいという気持ち反面、
そうやって目立っている男子や女子が大嫌いですし、苦手というところもありました。

そのDさんには周りには心やさしい人がたくさんいましたのですが、その人たちにいつも

「今日も学校でキレてきた」
「学校でタバコを吸ってきた。最近マルボロに飽きたなぁ」
「今日はムカついた人を殴ってきた」

などとウソをついて、そのたびに周りが説教のような注意をしてくるのを楽しんでいました。
後で思うと、孤独に耐えられずにわざと話題を作り、相手にしてもらっていることがうれしかったんだろうなと本人は言ってしました。

ところが、しばらくするとDさんは、V系バンドなどにハマリ、男性になりたいと強く願うようになりました。
男性になったらV系バンドができると勘違いしていたのです。そして、男になるならもっと悪いことをしなければと間違った認識をしてしまいました。
しかしそんな勇気がDさんにあるわけでもなく、いつものようにウソをついてばかりでした。

そんなDさんでしたが、大学生になるにつれ、このままでは自分はダメではないのか?と少しずつ疑問に思ってきました。
しかし、具体的に何をどうすればいいのかわからなかったので、悩みに悩んだ結果、自殺をしようと思うようになってしまいました。

ことあるごとに「死にたい」などと口癖のように言い、せっかくできた友達を遠ざけてしまい、本当に孤独になってしまったのです。
そんななか、唯一見捨てずにいてくれたのが、自分が男性になりたくて、ネット上で相談して回ったときに知り合った人でした。
その人に自分の事とは言わずにメールで「友達に死にたいと言っている人がいるんだけど、どうしたらいい?」と言うと、その人は
「そうやって言っている人ほど、仮に”しんだら?”と言っても死なないと思うよ。そんなことできる行動力があるなら他に解決策はあるし、言えるだけそんなに苦しんではいないと思う」
という返事が返ってきました。

Dさんは自分が言われているような気がしてならず、「その子にそれを言ったら窓から飛び降りて病院へ運ばれたし、そのあと俺が怒られた」と返事しました。
しかし、メールのやりとりで数分しか経っていないのにそんな事実があったなんておかしいので、相手は疑問に思って
「え、今の出来事?っていうか、もう病院に運ばれったってことはDがそれを既に言ってたん?」などと聞かれました。
もう、どう返事したらいいのかわからず、そのまま無視をしてしまいました。

その人の返事がずっと忘れられなくて、何度も思い出す度に自分の中で「変わりたい」という思いが強くなってきました。
そこで、高校卒業後に大学へは進学しなかったのですが、バイトを始めることにしたのです。
「とりあえずお金を稼ごう、そして、V系の曲を弾きたい!」と強く思いました。

「死にたい」と言っていた時期は1年経つのが遅かったのですが、「お金を稼いでギターを買う!」と決意した後はあっという間に1年が経過していました。
それを改めて思った際に、死ぬ前に何かできることがあったんだ。と思うようになったそうです。

現在でもたまに「しんだら楽だろうな」と思う時もありますが、そんなときはV系の音楽を聴いて自分の気持ちをごまかしています。

まだお金はたまっていませんが、少しずつ働いていつかはギターを購入することを夢見ています。